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影に抱かれて
第6章 ケージ・エピネ
夕刻、学園の門の前にリュヌは立っていた。
屋敷を出たのは早朝だったが、馬車に揺られて学園に着いた時にはもう太陽は沈み、日の光はすっかり消え……リュヌは心細さに包まれていた。
すっかり眠り込んでいるうちに到着してしまい、自分がどんな道を通ってここまで来たのかも分からない。フランクール家の馭者も戻ってしまい、ここからはたった一人で進まなくてはならないのだ。
目の前にそびえ立つのは鉄製の柵扉。
その上部は無数の槍のように尖っていて、まるで外部の者を拒んでいるようだ。いや、それとも内部から外の世界に出ようとする者を阻むのか……
柵扉の両脇にさらに高くそびえ立つ煉瓦の高塀を見渡し、リュヌはこれから始まる日々に思いを巡らせブルッと身体を震わせた。
伯爵家以外の世界をリュヌは知らない。
強い決意を持って出発したつもりのリュヌだったが、フランクール領から遠く離れた地へこうして一人で立ってみると、全く次元の違う世界へ投げ出されたようで怖くて堪らなかった。
「ジュール……僕、頑張るから……だから……だから……」
いつかまた屋敷に戻ることを誓って、リュヌは胸のロザリオを握りしめた。