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影に抱かれて
第6章 ケージ・エピネ
それはもちろん、ジュールでは無かった。
ふわふわとした赤毛の、親しみやすい笑顔の少年で……ジュールとは似ても似つかない。しかし同じく長身で、瞳の色はジュールと同じ深い緑色。そして何よりその声が、ジュールとよく似ていた。
驚くリュヌの顔を見て、少年はシーッと指を唇にあて柔らかく微笑む。それは先ほどの修道士と同じ仕草だったが、その与える印象は全く違っていた。
どうやら彼と相部屋らしい。
寄宿学校での生活においてそれは珍しいことではないのだろうが、この時までリュヌは全く知らなかったし、伯爵家では使用人にも一人部屋が与えられていたため、リュヌにとっては初めて寝起きを共にする人間となる。
そのことに僅かな緊張感を覚えたが、この少年となら上手くやっていけそうな気がした。不思議なことに、初対面の彼に対してリュヌは全くと言っていいほど警戒心を持たなかったのだ。
学園の門をくぐってから続いていた重苦しい気持ちが少しづつ消えていく……
「僕はドゥルール。ようこそ、ケージ・エピネへ」