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影に抱かれて
第1章 月夜の贈りもの
「……うん、ジュールがいてくれたら怖くない……寂しくない! 」
自分でも気付かぬうちにその頬を紅潮させているリュヌを愛しげに見つめるジュール。その言葉こそ、母の祭壇の前でジュールがリュヌの口から聞きたかったことだった。
そしてここでリュヌにさせたいことはまだ他にもあったが……無邪気なリュヌの様子を見て、まだ急ぐことはないだろう、とジュールは思った。
そして、いつものようにジュールはある歌を口ずさむ。
「月の光のもと――ピエロさん、ペンを貸して頂戴な――」
それは『月の光に』という、月を歌った……この国では有名な童謡だった。歌の中で何度も繰り返される―リュヌ―という響きを聞いていると、なぜだか子守歌でも聞いているかのようにリュヌの心は落ち着いていく。
「ずっと、ずっと二人は一緒だよ……僕の可愛い天使」
そう言いながら頬にそっと口付けてくれるジュールの整った顔を見て、ジュールの方がきっと天使さまに違いない……そうリュヌは思うのだった。