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ハツコイ♥アゲイン
第14章 伝えたい想い
太陽の光を反射する、重厚感のある文字盤
借りたままだった腕時計を差し出したけど
陽向が動かない。
「……? 陽向?」
私の手に視線を落としたままだから、名前を呼ぶと
「……あぁ、悪い」
沈黙の後、静かに受け取った。
……少しだけ触れた指先
それでも、お互いの手は元の位置に戻る。
「じゃあな、胡桃」
足の向きを、搭乗口方面に変える。
……耐えなきゃ、私。
あと少しだから……
「体に気を付けて」
「……っ うん…」
「彰によろしく。
帰る時があったら、また飲もうって言っといて」
「うん、伝えるよ…っ」
「胡桃」
最後に、もう一度振り返った陽向。
私を真っ直ぐ見つめて……優しく笑った。
「辛い時は無理するな。
頑張れない時は、立ち止まっていいんだ」
「……!」
「だけど、なるべく笑顔でいろよ。
胡桃は笑顔が似合うし
その明るさに、周りのみんなが元気を貰えるから」
「……っ」
「……元気でな」
── 右手をひらっと振って、再び歩き始めた彼の背中は
搭乗ゲートの中に消えて……見えなくなってしまった ──