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ドラスティックな恋をして
第11章 潮時・・
乗客の少ない電車はいつもよりも揺れを感じる気がする。
だが以前のようにその振動が昌宏との揺れを思い出させることはなかった。
ほんの数時間前までの喜びは一瞬にして砂のように手の中からこぼれ落ちた。
勇気を出して初めて昌宏と日付をまたぐはずだったのに。
あっけなく、取り上げられてしまった。
その悔しさも感じるが、それよりももっと大きいのは、
昌宏との恋に終わりが見えたという現実がのしかかってきている事だった。
親友に2人でいるところを見られ、そして一晩を共にしようとした夜に
突然夫が家に帰ってきた。
ここまで重なると、これはもう運命の導きとしか思えない。
神様がいるのかどうかわからないが、もうやめておけ、と言いに来たのかもしれない。
でなかったら、こんなにタイミングよく重なるものか・・
窓ガラスにピントが合う。
黒い景色をバックに映る自分の顔は、幸せからは程遠い表情を浮かべていた。
・・ここが・・潮時なんだ・・
依子は終わりの時を受け入れることを決めた。