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ドラスティックな恋をして
第7章 はじまり・・
「今日は楽しかったわ。ありがとうございました」
アメ横商店街はまだまだ多くの人でごったがえしているが、
依子は駅の方向へと体を向けた。
まだ7時だよ、と昌宏は依子の前に立ちはだかるが、
「お互い帰っても一人だからって遅くまでウロウロするのはいけませんよ。
それに吉本さんは明日はお仕事なんでしょう?」
歩き出す依子にすぐに並んで昌宏も歩く。
行き交う人の塊をよけるようにして歩いていたが、
依子の体がすれ違った若者とぶつかってよろけた瞬間、
昌宏はすぐにその腕を取って体を支えた。
「大丈夫?」
恥ずかしそうに頷いて体勢を立て直しても、男の手は腕をしっかりと握っていた。
どんどん熱が伝わってくる。体中に侵透していく。脈も・・早くなっていく・・
「あの・・もう大丈夫ですから・・」
少し声が震えた。
早くこの腕を放してくれないと・・逆に不安になってくる・・
「オレは自由に愛せる・・でもあなたはそうはいかないよね。
できないなら、この手を振り払っていいんだよ・・」
頭上で聞えた昌宏の声に、不安の的中を知らされた。
自分の中で広がりをみせる恋の火種。
何度も大きな呼吸をしたが、その火は消せなかった。
依子は昌宏の腕を振り払わなかった。
突然目の前に現れた、ドラスティックな恋の沼・・
すでに足元は泥の中に沈み始めていた。