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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
「早くも、手札を失ってしまったのは、失敗でしたね」
自分のターンを控えて、唯は正直に言った。
「どうかな」
と、強がってみせても、正直も内心ではそれを理解していた。
この時点で五分ではあったが……。正直は自身の手札を使い切り、後の勝負を山札に委ねることを余儀なくされている。まだ二枚の手札を有する唯の方が、当然ながら有利。
だが、特にミスをした訳じゃない……。
正直は思い直し、唯の出方を待った。
続く唯のターン。その提示カードと宣言は――?
【♢10】
「HIGH」
「……」
それを受けて、じっと間を取った正直であるが、既に考える要素は皆無。
できることは、唯が切り混ぜた山札の中より、一枚のカードを引くだけ。
「さあ……どうぞ」
「ああ……」
ここで正直が引くべきカードは、絵札(【J】【Q】【K】)のみ。それが【A】~【9】だったのならば、このターンの敗北が決まる。
残された勝負機会(ターン)が、あと一回か或いは二回であることを考慮すれば、絶対に絵札を引き当てなければならない場面だ。
「……」
そんな状況を踏まえながら、正直は山札の中よりゆっくりと、その一枚を掴み取っている。