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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
「せっかくの勝負。引き分けで、仕切り直しなんて無粋です。このままの流れで、次の私のターンに移っても――よろしいですよね?」
唯の言葉には、有無を言わせぬような強い響きがあった。
「ああ……了解だ」
だが、そう応じた正直も、それに押されたから、ではなく。運は自分に味方してると、そう判断したからである。
確かにラストの【♡A】には驚かされた。しかしながら正直が、山札から効果的に【♡Q】【♤K】を引き当てていることも事実。
唯の方がゲームを上手く進めたのは間違いない。それは逆に、正直が引き分けに持ち込んでいる、ということ。
この先は、運次第――ならば、この流れでの続行は、悪い判断とは思わなかった。
「では、改めてシャッフルを――」
唯に言われ――
「わかった」
正直は残された山札を、かなり入念に斬り混ぜてゆく。互いに手札を失って、勝負の行方は山札よりのドローにかかっていた。
「さあ――どうぞ」
正直は言って、テーブルの上に山札を横に広げた。
次は唯のターン。彼女は先ず『HIGH』か『LOW』の宣言をした後、その中より一枚の提示カードを選ばなければならない。
「……」
唯はじっと――居並ぶカード裏面、その幾何学模様を見つめていた。
そして――
「……HIGH」
それを口にすると同時、徐に山札へと――その細い指先を伸ばす。