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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
【A】は基本的に【1】として扱われる。しかし、【K】で『HIGH』を宣言された時には、その条件を満たす唯一のカードして使用することも可能。
――と。
正直がその様なルールを設けたのは、単にゲーム性を高める目的であったろう。他のトランプ競技にあっても、多くのケースで【A】は特別な効力を有している。
しかし皮肉にも、それは自分を不利にするものと化してしまった。
「切り札は最後まで、残しておくものですよ」
唯は何処となく得意げに言う。
【♡A】の手札を使う場面なら、それまでにも幾度かあった。だが唯は敢えて、それを用いてはいない。その結果として、最も印象的な使用法で正直にもダメージを残す格好となった。
「二勝二敗……引き分け、か」
正直は、力なく呟く。
既に両者の手札が尽きたことから、この勝負は終わり。その顛末は、正直が口にした通りだった。
だが唯の方は、どうやら――
「引き分けなんて、つまらない……」
「え?」
「勝負の続行を、強く希望いたします」
それに甘んじるつもりなど、皆無らしく……。