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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
前のターンで、唯の切り札となった――【♡A】。
しかしこのケースでの【♧A】は、飽くまで単なる数字の【1】に過ぎなかった。
そして既に行っている唯の宣言は――『HIGH』。
「ハ、ハハ……」
正直が期せずして笑ったのは、自身の勝利を喜んだからではなかった。
あんまりと言えば、あんまり。そんな唯の『運の悪さ』を目の当たりにして、場の重たい空気を緩和したいとの想いであろう。
何しろ――
「……」
唯は固く口を結ぶと、何かに耐える様にどんよりと俯いてるのだ。落ち込んでいるよう。どう声をかけていいのか、それもわからぬ程に……。
だが、暫くする――と。
「?」
それを不思議そうに見つめた正直の前で、唯は山札を集めそのシャッフルを始めた。
そうしてから――
「まだ、勝負は決していませんよ」
沈んだ声で言うと、カードの束を正直の前へ並べた。
「あ、そうか――!」
勝利を確信して疑わなかった正直は、それを見て自分が失念していたことに気がつく。