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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
午前十時のキャンパスは既に休みに入ったこともあり、とても静で落ち着いた雰囲気である。
昨日纏めたレポートを片手に、教授の研究室を訪ねていた。だが、その不在を知ると踵を返し、大学を引き上げようとしている。無駄足とはなったが、仕方がない。午後からは家庭教師のバイトで予定が埋まっていた。
新垣璃子は――研究棟の間の通用口を抜けると、広い構内の敷地を一人進んで行く。
「あれ?」
不意に足を止めたのは、幾つかのベンチと飲料水の自動販売機が置かれた休憩スペース。その近くを通りかかった璃子は、其処で寛ぐ知り合いの顔を見つけた。
「三嶋先輩?」
「やあ、どうも」
正直の友人であるその男は、にこやかに軽く片手を上げる。