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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

「こんな場所で、何をされているんですか?」


 璃子はその顔を訝しげに眺めると、そう訪ねていた。

 大学の構内で会った先輩に対しては、やや御挨拶であったかもしれない。しかし、この三嶋という男は、言わば璃子とは対極に位置するような学生である。すなわち不真面目の代表格であり、間違っても夏季休暇中の大学で見かけるタイプとは思わなかった。

 すると、三嶋は意味ありげな笑みを含みつつ言う。


「実はね――新垣さんを待ってたんだ」


「私を、ですか?」


「うん。昨日、電話くれたでしょ」


「ええ……突然で、失礼しました」


「いや、それはいいんだけど。不思議とそれから――君の顔が妙に頭の中に、チラつくようになっちゃってさー」


「はあ……」


 何を言い出すのか、と気のない返事の璃子。

 缶コーヒーを片手にベンチに足を組んで座っている三嶋は、その顔をじっと仰ぐと臆面もなくこんな風に言うのだ。



「新垣さん――よかったら俺と、付き合ってみない?」
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