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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
うっ……!
丁寧な言葉使いが、却ってざらついた心情を吐露してゆくようだった。それに怯みながらも、マスクを見据えると正直は言う。
「俺は……負けた方が裸になるなんて、思っていなかったから」
「私の言葉が足りなかったことは、認めます。ですが――」
唯は怒りをやや鎮めると、この様に続けた。
「――男性とは潜在的に、女性の裸を見たいとの欲求を宿している生き物の筈。ですから先程『望まない』との正直さんの言葉は、謝り。すなわち、嘘。私はそれを撤回することを強く求めます」
「……」
何故こんなにも、剥きになっている?
正直は唯の心中を量りかねている。だが――
「やっぱり、可笑しと思うんだ。だから俺は、取り消さないよ。もう、こんなことよそう」
自分の気持ちの中に嘘が無いと判断し、正直は穏やかな言葉で話した。
結果的には、それが――唯の心に更なる怒りを生じさせてゆく。
寒々と顕わになった幅の狭い肩口を震わせ、暗く沈んだ唯は告げた。
「ホントに……酷い人、ですね。私には、これ以上――」
「……?」
そうして、正直は初めて――唯の叫びを聞く。