この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
その弾けた想いを、耳にすると。
彼女は今、俺に何かを求めた――?
正直は漠然と、そう感じていた。
その疑問に答を出すことは到底に叶わず、そもそもそう思う根拠すら乏しいのが実情。
だが一方で、思い当ることを皆無とはできない。否、寧ろそれがあるからこそ、正直が唯の想いを挫いてしまったとも言えた。すなわち、それは単純。
自ら裸身を晒そうとする唯は、正直に『女である自分』を見せようとした。
だからこそ、傷つく。そう考えれば、ある程度の合点がいくものか……。
顔を頑なに隠す唯である故に、今の叫びに至っている――しかし、そうだと、しても。
彼らの始まりは、あまりに世間の男女間のそれとは異なっていた。違い過ぎて、歪過ぎた。
その出会いを元とするから、正直は唯の心に生じた機微に――只、戸惑ってしっている。否、見誤ろうとしていたのかもしれない。
単に男女の色情を求める筈など、正直は夢にも考えることはなくて。
マスクの下で唯のその素顔が、一体、どの様な揺らぎを表すのかと、それだけが一層の――気になっている。