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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
唯はチェストの鍵としてそれを手渡したが、特にラックのことは何も言っていない。そう言えば、やや何かを言い淀んでいたようではあったが……。
この中に、何か重要なものでも……?
正直は床にしゃがみ込み、テレビの台座となっている平たいラックの取っ手を掴んだ。中央から左右に、所謂、観音開きの扉である。
すると――
「これって――DⅤDデッキ、だよな?」
そのシンプルな薄い箱型の家電は、テレビの下に設置されていることから、容易にその様に判断することができる。おそらく録画機能のない再生専用の小型デッキのようだ。
とりあえず『POWER』スイッチを押してみると、緑色のLEDが点灯する。どうやら電源は通じているようだが、もちろんそれ単独では何ら用は為さない。
正直は首を傾けラックの奥までを覗き込む。が、それ以外には何も――デッキに投入するDⅤDの類を発見することは叶わなかった。
「なんだよ。意味ないじゃんか」
正直は少し残念そうに、そう呟く。
彼にしてみれば、とにかく。このロックドルームでの時間は、苦痛であった。眠ることの他には、時間を潰す方法がないのである。
ラックの上に置かれているテレビにしても、電源をオンにすれども漆黒の画面が映像を映し出すことはなかった。そんな環境で娯楽に飢えつつある正直が、このデッキに期待をよせたのも無理もないことであろう。
しかし、諦め半分ながらそれでもと一応、デッキの『開閉』ボタンを押してみる正直。
すると、ガチャリと音を立て開閉口からせり出したトレイには――
「お――!」
既に一枚のDⅤDが、セットされているのだった。