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【マスクド彼女・序】
第5章 四日目・五日目【表側の景色と裏側の闇】

 それは――



『お嬢さんと呼ばれることに、ウンザリしてるって顔だ』


『え……?』


『それなのに、今のキミは――上から目線の、呆れ顔。そのお嬢様気質を、まず改めたらどうだろう――と思うけどね』



「……」


 やけに見透かしたようなことを言われた。不愉快とまでは言わないが、やや興味を引かれていたのは事実らしい。静音としては珍しいことに、初見の男性と連絡先を交換している。

 最もあれ以来、幾度かあったメッセージに対し、今の処、返信するつもりはないのだが。


 あの妙に馴れ馴れしい彼は、何と言う名、だったかしら……?


「あ……!」


「静音、どうかしたのか?」


「いいえ、別に……」


 不思議そうにしている兄を、軽くいなして――。


 そう――確か、三嶋――と。



 静音は不意に、その名を思い出していた。

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