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【マスクド彼女・序】
第5章 四日目・五日目【表側の景色と裏側の闇】
「ううっ、五月蠅いなあ……」
何回目であろうとその音に慣れることは、どうやら永遠に無さそうだった。ベッドのマットレスに振動となって伝わるそれは、この上なく不愉快な目覚ましである。しかも――
正直は勢いベッドから飛び起きると、洗面所へ駆けこむ。急ぎバシャバシャと水を跳ねながらの洗顔。その後、息つく暇もなく歯磨きとトイレを済ませた。部屋に戻ると寝巻を乱雑に脱ぎ散らかし、例の中学生チックな制服に着替えを果たす。
「ヨシ」
と、一応の気合を込めながら、この部屋の出入り口のドアノブを掴む。
――ピタ。
耳障りな音がようやく鳴り止むのは、決まってこのタイミングであった。すなわちあの音は正直を強制的に目覚めさせると同時に、ドアの施錠が解けエデンへの道が開かれたことを報せている。
それは取りも直さず、既に唯がエデンにて待ち構えている、ということ。少なくとも昨日までは、そうであった筈――
――なのに。