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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】

 ともかく――


「ああ、違う違う。今、考えるべきことは――」


 正直は頭を数回振って、思考の切り替えを図った。

 そう――件の金欠問題は、これで振り出しに戻っている。三嶋と実家という当てを自ら切り捨てた以上、これよりの十日間は自力で生き延びるしかない。


「仕方がない。バイトでも探すか……」


 そして得た結論は、至極真っ当なものとなる。

 しかしながら、それとて簡単ではなかろう。ともすれば、明日にも無一文。事態は既に切迫している。就活もあるから、そう長く時間は裂けなかった。


 短期で、日払いのバイトなんて、そう都合よく――!


 そう思いかけ、ハッとする正直。何かを思い出すと、ジーパンのポケットを弄る。


「……」


 そうして手にしたのは、ピンクのチラシ。朝、アパートのポストに入っていたものだった。

 乱雑に折られたチラシを広げると、正直は其処に記された文言を注視している。

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