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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
「ああ、畜生……」
思わず苛立ちを覚え、吐き捨てる。
だが、自分が一番わかっていた。その苛立ちは母親にではなく、自らに向けたものであることを……。
高校を卒業し田舎を離れ、憧れの都会での大学生活。しかし、それも終わりの時が近づく。その焦り――そして、何より。
俺、今まで――何をした?
その自問が、その心境を顕わにする。何となく想いを馳せた東京で、しかし正直のしてきた事は、単に其処に馴染んだだけに過ぎなかった。
それは璃子を前にした時にも覚えた、何処か言い様のない感情にも似ている。