この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
高級マンションのリビングダイニングは、周囲の壁を造花で埋め尽くすように絢爛と彩られていた。
その調和を放棄した如き下品とさえ感じる原色の花々が、視界の中でチカチカと騒がしい。
その中で――顔をマスクで覆った奇妙な女と――それと対峙し唖然とする正直。
マンションの扉の鍵が、既に閉ざされると――其処は二人だけの密室となる……?
「エ、エデン……?」
状況を微塵もわからずに、女が口にした言葉を只、繰り返していた。
そのキーワードから何ら想像を抱けないのは、正直が怠惰な理系の学生である弊害であろうか。
しかし、その部分に意味を求めるのは、まだ早計であった。
何故なら――
「い、一体……何の目的で? 俺を……どうする、つもりなんだ?」
問い質すべき事項なら、他に事欠きはしないのだから。