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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】

 高級マンションのリビングダイニングは、周囲の壁を造花で埋め尽くすように絢爛と彩られていた。

 その調和を放棄した如き下品とさえ感じる原色の花々が、視界の中でチカチカと騒がしい。

 その中で――顔をマスクで覆った奇妙な女と――それと対峙し唖然とする正直。

 マンションの扉の鍵が、既に閉ざされると――其処は二人だけの密室となる……?


「エ、エデン……?」


 状況を微塵もわからずに、女が口にした言葉を只、繰り返していた。

 そのキーワードから何ら想像を抱けないのは、正直が怠惰な理系の学生である弊害であろうか。

 しかし、その部分に意味を求めるのは、まだ早計であった。

 何故なら――


「い、一体……何の目的で? 俺を……どうする、つもりなんだ?」


 問い質すべき事項なら、他に事欠きはしないのだから。

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