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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
「まあ、ともかく。お茶でも――いかが?」
ダークな色合いのマスクの目元。銀色のフィルムが象る仮初め瞳は、吊り上がったようなひし形。その奥に潜む真の眼差しは、その輝きを窺わせはしない。
だがそれは微かな力を以って、立ち竦む正直を見つめているようだった。
「さあ――どうぞ」
何時に間に用意したものか。紙コップにペットボトルの緑茶を注ぐと、彼女は先程まで正直が着いていたテーブルに置き。
そして、スッと差し出した右手で、それを正直に勧めた。
先の質問の答えは、未だ得られず。
「……」
だから、迷いながら。
しかし一方でこの部屋の中には、とりあえず他の人間の気配はなかった。しかし、それも飽くまでとりあえずである。
正直は警戒を緩めることなく、再びテーブルへと着いた。