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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
「あ――!」
床に敷かれた絨毯は予想以上にふかふかな感触で、倒れ込む二人を衝撃より守る。色合いやデザインのセンスはともかく、高級な代物である証拠だった。
眩いばかりの黄金色のひまわりの模様があり。調度その部分に頭を押しつけるようにして、正直は彼女の身体を押し倒した格好となった。
「……」
期せずして下になると、息を詰まらせている――マスクの表情。近くで目にした口元の肌と自然なままの唇は、彼女が思いの外、幼いのではないかと感じさせる。
しかし今はまだ、そんな興味を抱く時ではなかった。
「とりあえず――返してもらうぞ」
仰向けに倒れ、脱力した右手。その中に辛うじて握られているスマホを、奪おうとして正直は左手を伸ばした。
だが――カタン、と!
床を滑ったスマホが、壁を叩き鳴らす。それを取られまいとして、彼女が咄嗟に放りつけたのだった。
「な、何を――!?」
「……」
慌てる正直に対し、彼女は飽くまで平然。その表情の知れないマスクに見据えられ、正直の中にカッとした怒りが込み上げた。
「くっ、そぉ……」
己の身を苛む幾多の理不尽が、普段とは違う攻撃的な一面を引き出し。
「まずは、その顔――見せてみろよっ!」
「――!?」
徐にマスクに手をかけ、正直はそれを剥ぎ取ろうとしていた。