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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
姿勢を正し、椅子に座り佇む――マスクの横顔。
それを睨むようにしながらも、正直は徐に訊ねた。
「今の電話、誰から……?」
「……」
「新垣――って、女の子だったんじゃ、ないのか?」
「……」
無言の彼女の対応に、正直の苛立ちは募る。
マスクの彼女は、正直を部屋の中に足止めしながらも、一向にその目的を語ろうともしない。その上、大事な相手からの電話に対する、勝手な対応。
だが、その理不尽に何とか耐え――
「ともかく、返してくれよ――俺の携帯」
正直はそう言って、ゆっくりと右手を差し出す。彼女が大人しくスマホを渡したなら、冷静に話を聞くこともできたのだろう。
――が。
「――駄目です」
「なん、で……?」
「此処に在る限り――貴方には、外界との接触の一切を遮断していただきます」
その答えに呆然と耳にしながらも、正直はついに我慢の限界を迎えていた。
「ふざけんなっ! いいから、返せよ!」
「――!」
スマホを奪おうと、彼女に掴みかかる正直。
その拍子――。
ガタン――と、彼女が座る椅子が倒れた。