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縄の記憶
第2章 転

本堂で御本尊に手を併せたあと、小僧さんが良い香りのするお茶を出してくださいました。和尚様と二人でそれを呑みながら、わたくしのことを少しずつお話ししました。
伊勢の小さな小間物問屋の娘であること。お客で来た今の夫に見初められ、これも小さな両替商に嫁いだこと。毎日の暮らしに不便はないものの、まだ子供もできず、姑と顔をあわすのが気まずく感じてきたこと。
相槌を打つだけで、黙って聞いて頂いているうちに、身体の力が抜けてきたようで、いつの間にか膝が崩れ着物の裾がはだけてきておりました。
「時に、娘さん。名は?」
「胡蝶と申します」
「あでやかな蝶。また、蘭の花の名か」
「名前負けしております」
「いやいや。十分、名に合うて美しい」
そうお褒め頂くと、柄にもなく心の臓がトクトクと騒ぎ出しました。
それを見透かされたのか、和尚様は身をわたくしの方へぐいと寄せ、
「天女の香りがする」
と仰られました。
天女とは、あまりにも高貴なたとえでひととき我を忘れておりましたら、
「もう少しよく匂わせてもらえぬか?」
と、首元に鼻をお近づけになります。着物の合わせ目から和尚様の熱い息が感じられ、眩暈がしそうになった瞬間、和尚様の手が着物の裾を割りました。
「何をなさるのです!」
心の内では叫びましたが声には出ず。ただ
「はぁ」
という息が漏れたに過ぎませんでした。
和尚様の手は膝を超え、腿をゆっくりさすります。このような場所で、ましてや和尚様がこのようなことをなさるなど、考えも及びませんでした。ただ、ただ驚き、身動きできずにいると、腿にあった手はどんどんと上に上がっていき、ついに火照ったあの場所までたどり着いたのでございます。
伊勢の小さな小間物問屋の娘であること。お客で来た今の夫に見初められ、これも小さな両替商に嫁いだこと。毎日の暮らしに不便はないものの、まだ子供もできず、姑と顔をあわすのが気まずく感じてきたこと。
相槌を打つだけで、黙って聞いて頂いているうちに、身体の力が抜けてきたようで、いつの間にか膝が崩れ着物の裾がはだけてきておりました。
「時に、娘さん。名は?」
「胡蝶と申します」
「あでやかな蝶。また、蘭の花の名か」
「名前負けしております」
「いやいや。十分、名に合うて美しい」
そうお褒め頂くと、柄にもなく心の臓がトクトクと騒ぎ出しました。
それを見透かされたのか、和尚様は身をわたくしの方へぐいと寄せ、
「天女の香りがする」
と仰られました。
天女とは、あまりにも高貴なたとえでひととき我を忘れておりましたら、
「もう少しよく匂わせてもらえぬか?」
と、首元に鼻をお近づけになります。着物の合わせ目から和尚様の熱い息が感じられ、眩暈がしそうになった瞬間、和尚様の手が着物の裾を割りました。
「何をなさるのです!」
心の内では叫びましたが声には出ず。ただ
「はぁ」
という息が漏れたに過ぎませんでした。
和尚様の手は膝を超え、腿をゆっくりさすります。このような場所で、ましてや和尚様がこのようなことをなさるなど、考えも及びませんでした。ただ、ただ驚き、身動きできずにいると、腿にあった手はどんどんと上に上がっていき、ついに火照ったあの場所までたどり着いたのでございます。

