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残像
第9章 現の暮らし
「…ねぇ、八尋…」

「何?」

「アンタと添う時、市九郎の代わりは居ないって言ったこと、覚えてる…?」

こくり、と八尋が頷く。

「同じように、アンタの代わりも居ないのよ。この世でたった一人だけ。今生きてる人の中では、たった一人だけ。アンタだけが、私のことを好いてくれるんだわ」

「サチ…」

八尋の目から溢れる一筋の涙。

「サチ…好きだよ…ずぅっと…こんな身体の私を認めてくれたのは、貴女しか居ない…」

「こんな顔の私を認めてくれるのも、ね…」

一際強くサチを抱き締める。



幸せだ、と思えた。


この人と共になら、きっと満ち足りた心で生きて行ける。

もう、男じゃないなんて逃げるのは、止めよう。

男として、胸を張って、サチと市八を護って行こう。

そう、心に決め、八尋は眠りに落ちた…







ー了ー







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