この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第19章 【十九話】キスマーク
■ □ □
玲那は空腹のあまりがっついて食べてしまったが、食べ終わってからふと景臣のことを思い出した。
玲那は今まで、これほどの空腹を感じたことがなかった。今の今まで、とても恵まれていたことに気がつけなかった。
貪るように食べたことが恥ずかしくて俯いていると、トレイが下げられて、温かいお茶が目の前に置かれた。
玲那が顔を上げると、思っていたより優しい表情をした景臣と目が合った。
「美味しいでしょう?」
「え……はい。とても美味しかった、です」
「それはよかった」
そう言ってお茶をすする景臣を、玲那はなんだか不思議な気持ちで見つめていた。
しばらく無言でお茶を飲んでいたふたりだが、景臣が口を開いた。
「さて、少し真面目な話をしてもいいですか」
真面目な話とはなんだろうと思ったが、玲那は小さくうなずいた。
「山浦社長の件です」
そう言われ、玲那は背筋を伸ばして景臣を見た。
あまりにも衝撃的なことが続いていたが、道弘のことはまだ終わっていない。
「先ほど、連絡がありまして、社長の葬儀は社葬で執り行うそうです」
「社葬……」
そうだった、道弘は亡くなったのだ。葬式をしなければならないことをすっかり忘れていた。
「本来ならば玲那さんが喪主となるのですが、籍を入れていないこともありますし、だからといって前の奥さまがされるのもおかしな話です」
玲那はそのあたりがよく分からず、小さくうなずいた。
「あとは、喪主を立てられないのなら、内々にという話も出たようなのですが、さすがにあれだけ大きな会社の社長ですから、それもどうかとなり、社葬するのが順当なのではないかということです」
近頃は密葬で済ませるという人も増えているが、道弘の会社は規模も大きく、そして再婚にもかかわらず盛大に挙式したことを思えば、やらないわけにはいかないということなのだろう。
「とはいえ、社葬でも本来は喪主を立てるものなのですが、今回は社長のご両親もすでに亡くなっていますし、相応な人がいないため、異例なことですが、親族なしのケースとして喪主も施主も社長の会社が請け負うということです」
玲那は空腹のあまりがっついて食べてしまったが、食べ終わってからふと景臣のことを思い出した。
玲那は今まで、これほどの空腹を感じたことがなかった。今の今まで、とても恵まれていたことに気がつけなかった。
貪るように食べたことが恥ずかしくて俯いていると、トレイが下げられて、温かいお茶が目の前に置かれた。
玲那が顔を上げると、思っていたより優しい表情をした景臣と目が合った。
「美味しいでしょう?」
「え……はい。とても美味しかった、です」
「それはよかった」
そう言ってお茶をすする景臣を、玲那はなんだか不思議な気持ちで見つめていた。
しばらく無言でお茶を飲んでいたふたりだが、景臣が口を開いた。
「さて、少し真面目な話をしてもいいですか」
真面目な話とはなんだろうと思ったが、玲那は小さくうなずいた。
「山浦社長の件です」
そう言われ、玲那は背筋を伸ばして景臣を見た。
あまりにも衝撃的なことが続いていたが、道弘のことはまだ終わっていない。
「先ほど、連絡がありまして、社長の葬儀は社葬で執り行うそうです」
「社葬……」
そうだった、道弘は亡くなったのだ。葬式をしなければならないことをすっかり忘れていた。
「本来ならば玲那さんが喪主となるのですが、籍を入れていないこともありますし、だからといって前の奥さまがされるのもおかしな話です」
玲那はそのあたりがよく分からず、小さくうなずいた。
「あとは、喪主を立てられないのなら、内々にという話も出たようなのですが、さすがにあれだけ大きな会社の社長ですから、それもどうかとなり、社葬するのが順当なのではないかということです」
近頃は密葬で済ませるという人も増えているが、道弘の会社は規模も大きく、そして再婚にもかかわらず盛大に挙式したことを思えば、やらないわけにはいかないということなのだろう。
「とはいえ、社葬でも本来は喪主を立てるものなのですが、今回は社長のご両親もすでに亡くなっていますし、相応な人がいないため、異例なことですが、親族なしのケースとして喪主も施主も社長の会社が請け負うということです」