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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
風に飛ばされた落ち葉が足元に溜まっている。外階段の照明に集まってきていた虫達が姿を消し、代わりに秋を告げる虫が、どこかで小さく鳴き始めた。

階段を駆け上がってドアを開ける。

「ただいま」

明かりを点けて、テレビのリモコンのスイッチを押す。買ってきた焼肉弁当とコーラをテーブルに置き、洗面所で手を洗って、今日も一人の夕食をとる。

職場の騒音から解放され、まったりと過ごせるこの時間が気に入っていたのに、最近侘しく思えてきたのは、ユウが来なくなったからなんだろう。

「あいつ、どうしてるかな……」

外を眺める度に、あの家のポストに向かって歩くユウの背中を思い出した。

「いったいどうなってるんだ」

ユウがあれを投函した次の日も、その次の日も、あの家に変化はなかった。
女は相変わらず気取った様子で出かけていたし、それどころか、不倫相手の車が堂々と停まっているのも見かけた。

何一つ変わってない。
なぜだ……。

俺はユウと二人で確認したんだから。旦那が封筒を開け、写真を見ているのを。

わけがわからない。
妻の不倫を目の当たりにしながら、知らないふりができるのか?
第三者に知られて、脅迫状まで届いたっていうのに。


あいつはあの公園に行ったんだろうか。
誰も来ないと知って、だんまりを決め込んだのか?
なんで見て見ぬふりをする……。

家庭の平和のため?

いいけどべつに。
とりあえず、俺が他人の家庭を壊した事にはなってないんだし、今はまだ。



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