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歪んだ鏡が割れる時
第6章 第六章
「ここなら乗り換えなしで通勤できるね」

「うん、ありがとう茜、助かったよ」

「どういたしまして。私の時もお願いします」

「おう、任せとけ」

段ボールを潰してたたみ、部屋の隅にまとめた俺は、窓に新しいカーテンを取り付けにかかった。

「カーテンひとつで、お部屋の雰囲気が随分変わるよね」

「うん、前より明るい色にしたんだ。茜の好きな青い空と白い雲」

「ふふっ、いい感じだね」

俺は、茜の叔父さんに紹介してもらった公認会計士の事務所で、毎日数字と格闘していた。

ファイナンシャルプランナー2級の受験資格は、実務経験が2年必要だ。俺は、ゆくゆくは1級を取得して、独立する事も視野に入れている。

それまでは今の職場で働き、地道に足場を固めていくつもりだ。

「ところで亮ちゃん、お仕事慣れた?」

「それが、今ちょうど確定申告の時期だろ? もう大変だよわけわかんなくて。ただただ言われた仕事をこなしてる。会計ソフト、申告書ソフト、覚えることが多すぎるんだ。みんなの足を引っ張ってるかもしれないな俺、でもやるしかないよ」

「へー、凄いよ亮ちゃん。私もそのうち、亮ちゃんに教えてもらうかもしれないな、頼りにしてます」

茜はこうやって、いつも俺を元気づけてくれる。きっと俺のメンタルを、気にしてくれているんだろう。

「うん、お互い一歩一歩進むしかないよ。がんばろうな」

「そうだね。あ、亮ちゃん会計士目指すのも良いかも」

「会計士かぁ、確かに。両方いけたらいいな、うん、高い目標ができた」

「あ、でも無理することないよ」




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