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歪んだ鏡が割れる時
第6章 第六章
卒業式を目前にして、茜は俺の引っ越しを手伝いに来てくれていた。たいした荷物もないのに、俺の新しいアパートが早く見たかったらしい。

ここは前のアパートよりは築年数が浅くて、部屋も広い。一番気に入ったのは、洗濯機置き場が家の中にあるってところ。

茜の方は、都会生活に慣れるまで叔父さん宅を間借りする事になり、田舎で心配する親と俺を安心させた。でも本人が一番ほっとしているみたいだ。

俺がここで信用を得ることが出来れば、茜の叔父さんも安心して俺達の交際を見守ってくれる筈だ。茜の親も、俺の親も応援してくれている。

目標があるっていうのは、人をこんなに前向きにさせるんだな。
あの鬱々とした毎日から、俺はようやく踏み出せた。茜が持ってきてくれたこのチャンスを必ず活かして、将来に繋げていきたい。

「ごみ出しの日を守ってね」

「うん、冷蔵庫にメモを張ってある」

「じゃあ、私そろそろ帰らなくちゃ」

茜は春物のコートを羽織り、バッグを肩に掛けた。

「次に会う時は社会人なんだな」

「そ、学生気分は終わり」

「俺、頼れる男にならなきゃな」

「ふふっ、なってるなってる。亮ちゃんは頼もしいよ」

「そ、そうか?」

「う~ん、まだまだかなぁ、あはは!」

「このーっ」


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