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歪んだ鏡が割れる時
第6章 第六章
大切な人を送る時の電車って、なんでこう到着が早いんだろう。

「送ってくれてありがとう。この次会う時は、あの桜が散ったあとだね」

「うん。でも来年は散るまでずっと一緒に見ることが出来るよ、もちろんその次も」

そうだ、ずっと一緒にいるんだから。

「うふふー。そんな事言ってくれるんだ、嬉しいな」

この笑顔を、失いたくないと思った。いつまでも、俺の傍で笑ったり拗ねたり、素直な茜でいて欲しい。

「茜、俺がんばるから」

「私だって負けないよ」

電車に乗り込んだ茜が振り返った。

「俺が一人前になるまで待ってて」

「えっ?」

思わず出た言葉だった。

「え?」

自分に、え? と言う俺。

「どういう意味?」

「どうって……」

「ドアが閉まっちゃうよ、亮ちゃん早く言って、早く!」

「け、結婚を、結婚を前提に、俺とつきあってください」

ドアが閉まった。

「茜……」

ドアの向こうの茜が、両手でハートマークを作った。パールのブレスレットが、袖口から覗いている。
そのハートを俺の方に押し出して微笑む茜。

──は、い……

唇が、そう言った。








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