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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
一日が長い。
休日ともなると尚更。

部屋中のカーテンを外し、順番に洗って干す。窓を開け放って掃除機をかけ、床を拭く。窓ガラスを磨き、サッシの汚れをブラシで落とす。

平日が休みという事に慣れている筈なのに、これまで過ごしていた時間とは勝手が違う。
主婦になった友達と街に出て、映画やお茶を楽しんだり、本や洋服を見て歩いていた事が、遠い昔の事だったように感じる。

あの男を知ってから、私はいつの間にか、自分の毎日を変えていた。

頻繁に会っているわけではないのだから、生活は特に変わらない、家庭内でもいつもと同じ。そう思い込んでいただけで、頭の中では、いつも彼の事が優先されていた。
起きてから寝るまで、心には常に彼を住まわせていた。

「こんなに広いんだから、やっぱり戸建てなんかいらなかったよ雅人」

リビングを眺め、返事をしない椅子に話し掛ける。

雅人がここを出てから、部屋が広くなった。
春の風は温かさを増し、吐いたため息を連れて通り抜けていく。
あれから私は、あの男を何度も心から追い出し、自分の過ちを悔やんだ。

──二度と私の顔を見に来ないで

それだけをメールで伝えて以来、月に1度、そしてたった今、4度目のメールが松岡から届いた。

──透子、会ってくれないか

私は返信を拒み、その度に雅人にメールを送った。



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