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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
昼寝から目覚めた時、ユウは消えていた。

汗で濡れたTシャツを脱ぎ、枕元に転がっている目覚まし時計に手を伸ばした。

「やばっ」

出窓に置いてあるカメラを横目に外を見ると、知らぬ間に降りだした雨が窓ガラスを濡らし、まだ明るい筈の空は薄暗くなっていた。

車がやっとすれ違う狭い通りを隔てて左に三軒目、この辺り一番の豪邸が、俺の角部屋からはよく見える。

低い垣根の向こうに広がる芝生と木立ちの庭。閉じられたパラソルの周囲にはテーブルや椅子が置かれ、友人を呼べばすぐにでもバーベキューが出来そうだ。

2階建て鉄筋コンクリートのモダンな佇まいは、小さな美術館にも見える。
そしてこの家を一段と立派に見せている長いアプローチ。通りから玄関まで、緩やかに延びるその白い小道は、俺なんかには到底たどり着けない、果てしなく遠い道のりに思えた。

今日は何事もなかったのか、それとも俺が見逃したのか、駐車場にはドイツの高級車が一台、すました顔で停まっていた。

「ちっ、寝過ぎた」

扇風機の風量を"強"に変え、冷蔵庫から缶ビールを取り出して喉に流し込む。

「ん?」

誰かが階段を上がってくる。この足音はきっとユウだ。

ほら、ドアが開いた。

「あ、亮さん起きたの?」

「うん、今起きたとこ」

「おはよう。ふふっ、コンビニでカップ麺買って来ちゃった」

袋から中身を取り出すユウの髪が雨で濡れてる。


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