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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
俺は、茜を舐めてることになる。
確かにその通りかもしれない。

「でもあの旦那、大丈夫かな」

「大丈夫だよ、大人だもん」

「脅迫状あるし、警察に通報したりとか」

ユウは自信あり気だった。

「お金持ちは、世間体を気にする生き物だよ」

「ユウちゃん……」

その余裕はいったいどこから。

「たとえ通報されても何も問題ないよ。全然面識ないし、公園に行かなきゃいいんでしょう?」

「ま、まあそうだな。でも、ユウちゃんさっき見られたかも」

「ん?あ、さっきの中学生達には見られたね、でも平気だよ」

「なんで?」

情けなさを感じつつ、俺はまるっきりユウに頼っていた。時間を小一時間巻き戻して、あの封筒を破り捨てたい。ユウに危ない橋を渡らせるんじゃなかった。

「もうここには来ないから」

「え?」

「証拠は姿を消さなくちゃ」

ユウ……。

部屋の明かりは点けなかった。だけどユウは笑ってたんじゃないかと思う。それぐらい、軽く弾んだ口調だった。

「あ、帰ってきたよ」

女が戻ってきたようだ。

車を停め、何が起こったのかも知らずに我が家に向かっていく。旦那の車があったせいか、買い物袋を持った足取りがいつもより早い。確かめているポストは空だ。

旦那はどんな顔で妻を待っているのだろう。

ドアを開けた時に漏れた明かりは、女を温かく迎えてくれただろうか。

落ち込む俺に気を使ったのか、ユウがパックのご飯を温めておにぎりを作ってくれた。

「亮さんて、意外と真面目で優しい人だね」

たいして嬉しくもない言葉を残し、ユウは俺の前から姿を消した。













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