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お礼の時効
第5章 あなたは私が守ります、ずっと

「……来てくれて嬉しいです、春季……」
浅野は春季の体にしがみついて離れようとしない。嫌じゃないけど恥ずかしい、何とか離して欲しい。
「離して! 仕事に遅れるから!」
藻掻きつづけていると、浅野はいきなり腕を離した。支えがなくなり体がよろけてしまった。
浅野は立ち上がり着ていたシャツを脱ぎだした、シャツの下には意外に鍛えられている体があって、春季は思わず見とれてしまう。
春季の視線に気づいた浅野はくすりと笑いながら、春季に目を向けた。
「春季、今日は早く帰れそうですか?」
「今日?今日は一日打ち合わせが入っているの」
「なら、夕方どこかで夕食でもどうですか?」
「お断りします」
春季は持ってきたスーツケースの中のから、下着と柔らかい生地のグレーのワンピースを取り出し、リビングの隣の和室に向かっう。
背中越しに浅野の声が聞こえた。
「どこかで待ち合わせしましょう。私は本を読んでいますから----
「絶対に行きませんから」
あなたが来るまで待っています」
春季は振り向いて浅野の顔を見るが、相変わらず穏やかな顔をしている浅野の顔が憎たらしい。
ぷいと顔をそむけて和室の襖を閉めた。

