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お礼の時効
第8章 一緒に暮らしましょう
「あなたなんか大嫌いよ……」

頬が痛い、春季の絞り出すような声が聞こえる。

「出て行くわ……、もう嫌……」

自分の横を泣きながら部屋を出ようとしている春季の体に腕を伸ばすが、彼女はそれを振り払おうとした。
だがここで彼女を離すわけにいかない、ようやく自分の気持ちに整理をつけてマンションに戻ったのは、つまらぬ悋気で傷つけた春季に詫びるためだったからだ。
「仕事場」で顔を合わせたときの春季の泣きそうな顔が浮かぶ。

春季の腕を掴み強引にかき抱いた、まだ彼女は抵抗している。

「春季……、すまなかった……」

春季の頭に手を添えて胸に押し付けると、彼女は泣き崩れた。力ない腕で胸を叩かれるが、それをそのまま受け入れた。

「離してよ……、もうお礼はいらない……っ」
「春季……」
「だから、離して……!」

腕の中でそこから出ようと激しく抵抗している春季の体を強く抱きしめた。すると自分の胸を叩く力がどんどん弱まり、彼女はシャツを握りしめ、嗚咽を堪えながら体を震わせていた。

「つまらない悋気で、春季を傷つけたくなかったんです……」

その言葉に嘘はない。この二週間執務室で寝起きして、考えるのは春季の事だけだった。
あんな男がまだ春季の心にいる、そしてあの淫らで妖艶な彼女の姿を知っている男が自分の他に居ることが許せなかった。
その怒りを彼女にぶつけてもなにも意味が無いことは分かっている、だけどどこにぶつけていいかわからない。
行き場のない怒りを結局彼女にぶつけ、傷つけるくらいなら自分が離れた方がまだましだ。
憧れ続けた人を傷つけたくない、その一心だった。

「あなたはいつだって、自分を通す。それで私がどんなに振り回されたか分かってるの?」
「春季……。すまない……」

口から出る言葉は謝罪の言葉、それしか言えない自分が情けない。こんな自分がお礼として彼女を幸せにする権利などないのかもしれない。初めて彼女を見た日のことを思い出した。
そしてノートを貸してくれたあの日のことも。

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