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お礼の時効
第9章 私と結婚してください

「和臣、そっちの本持ってきて」
ソファに腰掛けながら本を読んでいる春季は、和臣に声をかけた。和臣はソファの横に置かれている分厚い本を持つと、春季の横に置いた。本の表紙には商法概要と書かれていて、どうやら企業法務の勉強をしているようだ。
真剣な眼差しで文字を追う春季の姿を眺め、和臣は昔のことを思い出していた。
和臣は春季のコップが空になりかけていることに気がついて、お茶を足そうとキッチンに向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶が入っている容器を取り出してリビングに戻り、コポコポと麦茶を足した。それに気づいた春季が本を読む手を休め、和臣を見上げ微笑んだ。
「ねえ、和臣。あなたはいつも優しいのね。あなたはお礼をしたいと言っていたけれど、今では私があなたにお礼をしたいくらいよ」
自分から優しい言葉をかけるときは微笑みを溢すのに、こちらが愛を囁くととたんに照れてそっぽを向く。結婚して半月になるが、可愛い新妻はなかなか慣れてくれないらしい。
「私は春季が側にいてくれるだけで充分あなたからお礼を頂いてます。だからお礼は言わないでください」
春季の困った顔を見ると、それを微笑みに変えたくなる。和臣はソファに腰掛けると春季を抱き寄せた。
「困った顔をされると、こちらも困ります、春季……」
「困らないで頂戴、せっかく人がお礼したいって言ってるのに」
頬を膨らませて顔をそらす春季の姿に、和臣はつい微笑んでしまう。
「私がどんなに今が幸せか分かりますか?」
春季の額に自分の額を当てて和臣は目を閉じた。
ソファに腰掛けながら本を読んでいる春季は、和臣に声をかけた。和臣はソファの横に置かれている分厚い本を持つと、春季の横に置いた。本の表紙には商法概要と書かれていて、どうやら企業法務の勉強をしているようだ。
真剣な眼差しで文字を追う春季の姿を眺め、和臣は昔のことを思い出していた。
和臣は春季のコップが空になりかけていることに気がついて、お茶を足そうとキッチンに向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶が入っている容器を取り出してリビングに戻り、コポコポと麦茶を足した。それに気づいた春季が本を読む手を休め、和臣を見上げ微笑んだ。
「ねえ、和臣。あなたはいつも優しいのね。あなたはお礼をしたいと言っていたけれど、今では私があなたにお礼をしたいくらいよ」
自分から優しい言葉をかけるときは微笑みを溢すのに、こちらが愛を囁くととたんに照れてそっぽを向く。結婚して半月になるが、可愛い新妻はなかなか慣れてくれないらしい。
「私は春季が側にいてくれるだけで充分あなたからお礼を頂いてます。だからお礼は言わないでください」
春季の困った顔を見ると、それを微笑みに変えたくなる。和臣はソファに腰掛けると春季を抱き寄せた。
「困った顔をされると、こちらも困ります、春季……」
「困らないで頂戴、せっかく人がお礼したいって言ってるのに」
頬を膨らませて顔をそらす春季の姿に、和臣はつい微笑んでしまう。
「私がどんなに今が幸せか分かりますか?」
春季の額に自分の額を当てて和臣は目を閉じた。

