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小田桐菜津子と七つの情事
第4章 四人目は同級生
「なにそれ、格好良いお酒飲んでるじゃない」
「ビールだけだと腹が出るからな」
「そんなこと気にしてる訳?」
「お前はいいよな、そういう心配なくて」
そう、鈴村は高校生の時からヘアスタイルが大人っぽく変わったくらいで、特に老けた印象がない。
「なにそれ。今でもガキっぽいって言ってるの?」
「ちげーよ、今でも若々しいって褒めてんだよ」
「あ、それってシタゴコロね?」
くふ、って笑いながら言う鈴村の流し目に、やたらとドギマギしてしまう。行きつけのキャバ嬢とならコレくらいの軽口、難なくこなせるのに。
「そうだよ下心全開だよ。オレはずっと鈴村のファンだったからな」
言ってやった。
参ったか。
鈴村は目を丸くして、オレの言葉を受け止めている。
「いやそこは『なにそれー』とか言ってくんないと、話が詰まるじゃんか」
「な、なによ、それ」
「いや今じゃなくて」
オレの苦笑は深まる。喉のつかえが取れてしまえば、なんのことはない話だった。
でも、鈴村にとってはそんな簡単な話ではなかったのかもしれない。
テンポの良い会話のキャッチボールが途切れた後に彼女が口に出した言葉は、この夜の別の扉を開けるキッカケになるものだった。
「…笛木くん、でも…それ、本気だったの?」
上目遣いにこちらを見る鈴村のその、薄く曲がった唇に、店のライトが反射して鈍くきらめいた。そのことを、今でもハッキリと記憶している。