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小田桐菜津子と七つの情事
第4章 四人目は同級生
「私も東京の家に帰る。ホテルで少しだけ寝てからね。だから笛木君も、お家に帰って。奥さんと子どもさんが待ってるわ」
歩行者用信号が、また、青に変わった。
「鈴村。またいつか、会ってくれるか?」
「今日だけよ。そうすればきれいな思い出になるから」
そして、オレを見た鈴村奈津子は、知らぬ間に、大人の女になっていた。
彼女は、小田桐奈津子という、見知らぬ女になっていた。
彼女は最後にとっておきの笑顔を見せると、オレから離れていった。
オレは中央分離帯に残されたまま、彼女が道路の向こう側に渡りきるまで、見送っていた。
さよなら、鈴村奈津子。
オレは振り返ると、青信号が点滅に変わった、夜明け前の往復六車線の横断歩道を、急ぎ足で渡っていった。