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小田桐菜津子と七つの情事
第4章 四人目は同級生
オレ達は、往復六車線の広い国道の横断歩道の、上下線に挟まれた中央緑地帯に立っていた。
鈴村は、絡めた指をほどいた。
そしてオレに向き直った。
微笑する鈴村の肩の向こうで、歩行者用信号が赤に変わった。
「笛木君は、お家に帰りなさい」
鈴村は、オレと目を合わせずにそう言った。
「だけど」
「だけどじゃないの。もう夜が明けるわ」
「鈴村…」
その声に、鈴村の目がこちらに向く。
思いのほか、強いまなざしにオレは少したじろいだ。
「私はもう、鈴村じゃないわ。私の名前は、小田桐よ」
そう言って、鈴村は、オレに抱き着いてきた。
「素敵だった。今夜。笛木君が素直になってくれたように、私も素直になる。私もファンだったよ。笛木君の。男バレ部長の笛木君の、ファンだったよ」
そして、彼女は身を離した。
「でも、おしまい。朝が来るから。その前にお別れしましょ。素敵な思い出をありがとう。忘れないわ、わたし」
オレは、何も言えなかった。