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小田桐菜津子と七つの情事
第7章 最後の情事
「小田桐くん、ね…そっちへ行ってもいい?」
なっちゃんがそう声をかけてきた時、ぼくには断る理由がなかった。
ん、と頷くと、なっちゃんはこちらの布団に入ってきた。
「あったかいね、小田桐くんのお布団」
なっちゃんはそう言って、こちらの肩のあたりに鼻先を埋めてきた。普段と違うシャンプーの香りがする。
「浴衣、ゴワゴワしない?」
「そういうもんじゃない? 田舎の民宿の浴衣なんて、たいがい糊が効きすぎてるんだよ」
「うん」
なっちゃんはそれからしばらく口を開かなかった。
ぼくはその背中に手を回した。いつもながらの細い背中。その手を、ゆっくり腰の方へ下ろしていった。腰を抱いて、少し隙間のあったふたりの間を詰めた。
「忙しそうだったね、このところ」
そう、声をかけた。
うん、と声を出さずになっちゃんはぼくの肩で頷いた。
「少しは落ち着いたの?」
穏やかに問いかけるその声を無視して、彼女はこちらにさらに身を寄せた。ずっと馴染んだ妻の身体のうねりと熱が、そっとこちらに伝わってきた。