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小田桐菜津子と七つの情事
第1章 最初の情事
今夜のお客は、背の高い女性だった。
成熟した大人の雰囲気があり、とても有能そうな顔つきをしている。
「今日はお声をかけいただき、ありがとうございます。私どもは「痛くないカイロプラクティック」を標榜(ひょうぼう)しておりまして、身体の歪みを整えるお客様の身体の調律師を目指しております」
いつもの前口上を述べると、ええ、と彼女は答えてくれた。
「ポキポキしないってフロントのチラシにあって、気になったんです」
ホテルの部屋での施術となるため、予約が女性の場合は男性の施術者はいかないのが原則だ。
が、今日はあいにく他のスタッフの身が空かず、断りを入れた上で店長の私が対応することとなった。
「小田桐、と言います」
施術前の簡単な問診で名前を聞くと、彼女はそう答えた。東京から出張で来ている。あるメーカーのマーケティングの仕事をしている。
「広島には学会に参加しに来たんです」とのこと。
偉い先生のアテンドで、身体が硬く凝ってしまったという。
《癒し屋》と書かれた名刺を渡して、私も自分の名を名乗った。