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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第6章 ここにいない人



電車に揺られながら、悠は隣に座る彼氏の顔を見る

距離が近付いたと思ったのはほんの一瞬

凪はあれからずっと黙ったまま、何処か思い詰めた顔をしていた

そんな彼に耐え切れずにまだ明るいうちに帰路につき、一言も言葉を交わさぬまま悠の最寄り駅に到着する

何も言わないが特に不機嫌という訳でもないらしく、悠が立ち上がると凪も当たり前のように付いてきた



「……」



夕陽に染められた町

それは人を寂寥に誘い込む

悠には凪が何を考えているのか掴めなかったが、自分と似た物寂しさを感じているのは何となく分かった

何一つ共有することのなかった二人の気持ちがここに至って初めてシンクロする

それはあまりにも哀しいことだった



「送ってくれてありがとう」

「ああ」



家の前で二人は短い別れの挨拶を交わす



「……悠」



凪は家に入ろうと背を向けた悠を呼び止めた



「ごめん……な」

「?」



小さく呟かれた謝罪の言葉に悠は首を傾げる

だが聞き返そうと口を開いた時には凪はすでに背を向けて来た道を引き返していた



「……」



どういう意味だったのだろう



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