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水流金魚
第3章 溺れる金魚
***
それから優祐さんとも咲ちゃんとも相変わらずだった。優祐さんの大人の余裕と色気。咲ちゃんの優しさと安心感。だけど、私の心は咲ちゃんのほうに傾いていた。女性扱いより、私は何時まで経っても女の子扱いされたい。三十過ぎた女がこんな感情を持つのはおかしいことなのだろうか。
咲ちゃんとは、午前十時から午後三時まで週三回程度会っていた。優祐さんと会う頻度より多かった。奥さんのいる年上男より彼女のいない年下男。私だけを見てくれるのは咲ちゃんだと、次第にそう思うようになっていた。なのに優祐さんと旅行の約束をして、その前日に咲ちゃんと会っている。家では平然と子ども達と旦那と共に笑って、自分でも最低なことは解かっている。それでも人の感情というものは止められない――。
「あー…材料足りない。ちょっと買ってくるね」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
咲ちゃんはそう言って、軽いキスをした。こんな何気ないことで頬が緩む。本当はずっとこんな甘い生活がしたかった。だけど、夫婦というのはいつから冷えきったお味噌汁のようになってしまうのだろうか。財布だけを持って、家を出た。