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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第10章 "恋"


「もし、向こう側の間者だったら?」

「そん時は斬るまでさ…
兎に角会ってみない事には始まんないだろ」

「それはそうですが…」

男所帯の新撰組、女の間者は圧倒的にと言うか全く居ない…

仕方が無くなのか忍の技の一つなのか山崎が女に変装して島原に潜入しているくらいである。


「その内逢える段取りをつけるさ、早い事にこした事はねぇ、そん時は勘が良いお前と橘を同行させる」

「…それは命令ですか?」

「…あぁ、そうだ」

「…承知しました」

命令には絶対、其処に私情は挟まない、そんな総司だからこそ頼める命だ……

話は一段落付いて、おまけに命令まで貰い総司は一礼して土方の部屋を出て行った。


(すまんな総司…)


総司が島原‥遊廓などの女共の売り買いを商う店を嫌う事を知りながらの命令…

心の中で謝りながら、土方は山のようになっている仕事を再開した……。




幹部棟の縁側ー


総司は縁側に座ってぼーっと庭を見ている…
いや見ているつもり……

恋を自覚をしたのは良いけれど、好きなのは自分だけかも知れない…
そんな漠然とした不安に襲われる。


(橘さんは私の事をどう思っているのでしょう??)


切ない瞳は夢の中の話…
実際は二人の間には何一つ無い…

自分と同室でもまるっきり気にされていない…
はっきり言って男と見られているのかも怪しい限り…

総司の恋も複雑で前途多難である…。


瑠衣の心の変化を総司はまだ知らない・・・・・
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