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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第12章 "鏡"


すまなそうに瑠衣は自分から顔を背けてしまう。

先程考えに没頭していた瑠衣の表情は冷たい氷のような‥まるで他人事を見ているそんな印象を総司は感じてしまった。


(今のは一体…??)


瑠衣のあんな表情は一度も見た事は無い…
一体何を考えていてあんな表情をしたのか…
総司の胸に得もしない不安が過ぎる…


(橘さんは最終的に何がしたいのでしょう?)


朱雀様と懇意にし、"鬼"の相手をする事を前提に新撰組に入って来た。

ではその目的は??
組を裏切る事は無いと確信出来る、だが何か違う目的があるのも確かだとは思う‥何かは分からないが…


「本当にすみません…
自分考え出すと止まらない癖があるんです…」

塞ぎ込み小さな声で瑠衣はそう言う。

「…いえ、考える事は良い事だと私は思いますよ…
ただ、周りが見えなくなるまで考える人は珍しいですけど」

「自分馬鹿ですから、一つの事しか頭に入らないんですよ」

冗談半分に瑠衣は少し笑う…

「…でしたら私は剣の大馬鹿ですかぁー!?」

周りが見えなくなるのは自分にも心当たりがあるので、瑠衣に強く言えないのが悲しい所。

「やだなぁ沖田先生は違うと自分は思いますよ」

「あー
変わらないと私は思いますが…」

やっと顔を上げた瑠衣と、二人顔を見つめながら言い合う…。


「「・・・・・・・・」」


「ぷっ…」

…先に堪えきれなくなったのは瑠衣の方だ

「ぁはは…」

総司も限界とばかりに吹き出した…


「「ぁはははははは…」」


二人の笑いは止まらない…
深夜の京の街に総司と瑠衣二人だけの笑い声が木霊する。


(何やってんねん、あの二人…)


一応確認の為に二人を追って屋根の上に居た山崎は完全に呆れ顔である。



「はははは…
た…橘さん…鏡に光が……」

鏡の光は割と近くを示している。

「は…はい…沖田先生行きますか…」

まだ目に涙を貯めはいるが、何とか笑だけは抑える二人…


そして今日二度目となる"鬼"退治へと向かったのだった・・・・・
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