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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第19章 "縛"
その後・・・・・
二人して湯当たりを起こし、フラフラしながらも何とか自室まで戻って来た。
「風呂場はちょっとやり過ぎましたねぇ-
まさか本当に逆上せるとは…」
「全くです…
だから時と場所は考えて下さいと言ったのに…」
総司と瑠衣は布団の上で転がってる…
風呂場から此処まで来るだけで二人共精一杯だったのである………
「はぁー…」
「ふぅー…」
二人‥案外似た者同士かも知れない・・・
逆上せもある程度収まって、瑠衣はやっと布団に潜る。
総司はまだ逆上せる様だ…
赤い顔がちょっと可愛く見えるのがまた面白い。
クスッと笑いながら、とりあえず眠りについた(因みにこの時点で明け方なのだが…)・・・
その後五日程で、瑠衣は日常生活に程影響しない状態まで回復していた(本当は三日目辺りから動けたが、あまりに不自然なので布団の中で我慢していた)。
「やっぱり外の空気が一番だね」
井戸で顔を洗い、そのまま屯所内を歩く…
朝の澄んだ空気が心地良い…
『ヒュン‥ヒュン‥』
「?????」
道場の方から素振りの音が聞こえる。
音からして、かなりの実力…
多分藤堂以上‥幹部の誰か。
前の怪我の時の斎藤との一件もあるので、音だけ聞きながら朝の屯所の散歩の続きをする。
炊事場の近くから平隊士達の一般雑魚部屋を抜け、幹部棟の方に回る。
ふと桜の木が気になり、幹部棟の中心の庭に出る…
(桜の木も久しぶり…)
冬に入り、堅くその身を耐えている木にそっと触れる。
(・・・
一番始めに出会ったのが、瑠璃とお前だったっな…)
瑠璃の水晶は耳にしっかり付いて、何時も風に揺れている…
桜の木は何も答えてはくれない…
普段なら漠然とした感情が流れ込むのだが、過去に居る為に大地の加護から離れている今の自分には、自然からの心は入って来ない…。
(この桜の木と話がしてみたかった…
何故だろうな)
そんな事を思いながら木に触れている。
(何時の間にか本当に此処が好きになったなぁ‥
別れが辛い‥な…)
何時かは来る別れの時、分かってはいるが寂しさを感じる…。
「お~い瑠衣-!!
朝飯だぞぉー!!」
遠くの通路で原田が叫んでいる。
「はーいっ、今行きまーす」
思いを振り切り、此方も叫び返して、大広間に足を向けた。