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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第21章 "術"

「なんだ、また俺に可愛がられに来たのかと思ったぜ…」
殺気も気配すらも無く屋根の上に佇むのを見、逆に背筋がゾッとする。
「ふんっ…
誰がお前なんぞに何度も同じ手を喰うか‥
言っただろうお礼参りだと」
瑠衣はゆっくりと刀を引き抜く…
「大人しく従えば良い女なのにな」
瑠衣に合わせて高杉も刀を抜くが……
その瞬間!!
『ザシュッ』
気配も姿も見えないまま、高杉の右腕に痛みが走る!!
(何だ?
全く見えなかった‥)
だが腕からは血が滲み出て来て、確実にあの女がやった事だけは分かる。
「どうだ?
同じ場所を、同じ奴に二度斬られた心境は??」
先程と同じ屋根の上で不適な笑みを湛え、瑠衣は刀を肩に担いで座っている。
そう"神足"で一気にに高杉に詰め寄り、腕に一撃を入れ、そのまままた屋根の上に飛び上がったのだ。
高杉からは、瑠衣が何時動いたかすら分からなかっただろう。
「ちっ…
同じ場所を狙うとはな…
良い腕だよお前は…」
「そりゃどうも…」
瑠衣の笑みが消え、無表情に高杉を見下ろしている。
斬られた右腕を押さえ、瑠衣を殺気と共に睨みつける高杉…
瑠衣にとってはそんな事は大した問題ではない。
「ただ殺してはつまらないからな…
こういうのはどうだ?」
瑠衣が屋根から飛び降りる、その行動に気配も音も無い…
反射的に左手で刀を構える高杉!!
『キ―――――――ンッ』
だがその瞬間に、刀は瑠衣によって弾き飛ばされた!
「無駄無駄…」
無表情のまま瑠衣は懐から符を取り出し、素早く高杉の懐に貼り付けた……
「なっ!?」
符に触れた瞬間から高杉の体は石の様に動かない、それを見て瑠衣はニヤリと笑う。
「だから言っただろ、お礼参りだと…
お前がした事と同じ事をしたまでだ」
そう言いって、血を拭って朱桜刀を収めてしまった。
「血が流れ過ぎ死ぬのが早いか、符の効力が切れるのが早いか‥楽しみだな…」
「貴様・・・」
後は用が無いと言わんばかりに、瑠衣は高杉の前を知らぬ顔で通り過ぎる・・・

