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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第22章 "罠"

「無差別ですよねぇー
それも斬り口がばっさり、今日は首と胴が散らばってましたから、後始末が大変でしたよぉー」
幾ら土方でも、朝からバラバラ死体の話で始まるのは良い気分ではない。
「全く…
殺るならもう少し綺麗に殺れってんだ…」
寝起きにこの話では、土方ですらもキツいキツい・・・・
「斬り口は刀より鋭利な物、それも胴を一斬り、余程特殊な武器で無ければ出来ない芸当です」
瑠衣はただ無表情に、淡々と状況説明していく…
「あぁ、大太刀辺りならば出来そうですね、後は忍が使う特殊な忍具…」
「ああそうだな、その辺ならいけるだろうさ、だがな総司、橘お前らだって出来るだろう…」
確認とばかりに土方は二人に問う…
「出来ますねぇー」
「えぇ出来ます」
否定しない所が少々怖い・・・
「はぁー
で、土佐藩の方はどうだった??」
死体は既に土佐藩に引き渡している。
「あまり良い返答はありませんでしたねぇー」
当たり前と言えば、当たり前の話‥
何処の世界に、朝からあんな惨殺死体を持ち込んで、良い顔する奴が居るかっ!!
つい愚痴りたくなる気分を押さえ付け、瑠衣は話を続ける。
「土佐藩邸でも全く心辺りが無いと…
今までの五人と合わせても、何処にも接点が無い…
倒幕佐幕関係無しにですので…」
「まぁな…
此処まで脈絡が無いとただの人斬りという線も捨てきれねぇ、面倒な限りだな…」
土方は内心盛大な溜め息を吐く…
此処の所この騒ぎで上からの苦情が多い、事実近藤さんは毎日のように会津藩邸に呼び出しを喰らっている。
「手がかり一つ無くか…」
頭をポリポリと掻く、もう恒例の困った時の土方の癖である…
「少しでもあれば楽なのですけどねぇー」
「全くです…」
此処は総司と瑠衣の嘘…
こういう時の二人の連携は、土方すら見破れ無いくらいに、見事に隠してしまう。
「兎に角報告は以上です」
「あぁ」
嘘の苦手な総司の為に、さっさと話を切り上げ土方の部屋を逃げるように出る二人。
「はぁー
事がこれ以上大きくなる前に何とかしたいですねぇー」
「自分だってそう思ってますよ、色々と面倒くさい」
廊下を歩きながら、コソコソと愚痴る総司と瑠衣…
端から見れば、怪しい二人組にも見えなくも無い。
実際"隊長副隊長男色説"なるものが流れたとか……

