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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第26章 "考"

幹部棟の一室…
此処にも考える者が一人…
煙管を咥え、部屋中煙りで充満している。
「彼奴は朱雀様と何処まで繋がりがあるんだ??」
そう、部屋の主土方である…
普通に考えても朱雀様と一緒に御所に入って行くのはおかしいだろう…
他の一族の者が、ああして朱雀様の警護と己が力を誇示するように、輿の周りに配置させているのに、橘は朱雀様と同じ輿に乗り現れた。
普通の大名行列に置き換えて考えてみても、主である殿様くらいしか駕籠には乗らない、有るとすれば正室か、殿様に対して余程の重要人物…そんな所だ。
だとしたら後者の方が当てはまる、隠してはいるが、あの国で一番の剣士と言われる朱雀様と同格の腕を持ち、幼少から朱雀様と面識があるらしいし…
逸れならば重要人物として、朱雀様と一緒に御所に入っても誰も文句は無いだろう。
「間違っても前者は無いだろ…」
橘には総司が居る、彼奴の性格上、総司を裏切るとは思えない…
だが‥彼奴は朱雀様の命に背けるのか??
もし、あの方がそうそう行動に出ても、橘は逆らえ無い‥そう思う…
あの妖艶な姿を見たら朱雀様だとて…
「…何考えてんだ俺は……」
煙管を吹かし、気を落ち着かせようと試みる…
だが、思い出すのは"鬼"と戦った後の橘の姿…
総司と勘違いしてたとはいえ、自ら腕を絡め口付けを返し…
敏感に反応する肢体…
女に自信がある自分でさえ、理性が飛びそうになった。
そんな橘を男共が見逃す筈は無い、現に高杉は橘に以上な執着を見せている。
朱雀様がそれを見逃すか?
答えは出ないが、良い感じはしない…
もし‥自分のものならば、毎夜離さず壊してしまうまで抱きそうだ。
「はぁー
だから……」
どうして、そっちに考えが行くんだ?
朱雀様と橘の繋がりだろっ、彼奴が組とは別の何かをやっている事は薄々感付いている、多分それと朱雀様は関係があるんだろう。
何までは流石に分からないが、面倒事だというくらいは分かる、昨日の一件もそれに関係が有るのではないか??
後ろ盾の一つである、朱雀様のやる事に口は挟めない。
もし、逆らえば組の財政は破綻だろう…
会津公だけの援助では組は保たない。
「糞っ‥知らぬ存ぜぬを通せってか…たくっ……」
土方はそのまま畳に転がる…
まだ、頭の片隅に瑠衣の妖艶な肢体を残して……

