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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第30章 "桜"

「では行きましょう総司…」
「えぇ…」
二人は手を繋ぎ、裏通りを通って街中に出る。
「それで、何処に行くんですか?」
「あぁ…
祇園に料亭を予約してます、その前に一件寄っても良いですか?」
「はい、構いませんが?」
何処に寄るのだろう?
そんな疑問を持ちつつも、総司に手を引かれて京の街中を歩く。
前回のような失敗をしないように、巡察経路から離れた場所に居るし、気配読みも忘れない。
「あっ…
此処ですよー」
其処は前に女姿で総司と来た小間物屋…
総司は中に入って行く。
「…総司??」
「前に簪を欲しそうに見ていたでしょう、主人に言って取り置きして貰ってたのです」
「えっ!?」
確かに綺麗な簪だったが、自分は使わないと言った筈………
「やはり、好きな女性には何か贈りたいのが男なのですよ…
だから瑠衣‥簪貰って下さい」
「良いんですか?」
「えぇ、別に使わなくても良いのです、瑠衣が持っててくれれば…」
瑠衣は優しく笑い総司を見る。
「…分かりました…
ありがとう‥総司…」
嬉しそうに少し頬を染める姿は愛くるしい…
特に女子姿の、瑠衣のその仕草は総司でも見入ってしまう程。
「……で‥では少し待ってて下さいね」
総司は店の奥に入り主人と話をしている。
瑠衣はその間に、店の中を楽しそうに眺める事に……
(あ…
そう言えば紅……
今日はしていなかった)
色々並んでいる紅に瑠衣の瞳は釘付けになってしまう。
それぐらいの金子なら自分にもある(というより使かわない)、薄紅の紅が瑠衣の目を引く…
(うーん…
せっかくだし買っちゃおうかな?)
値段も手頃で色も綺麗…
総司喜んでくれるかな??
そんな事を思いつつ、その紅を手に取って見た。
「…うん…
やっぱり決めた!」
紅を持ち、瑠衣も店の奥に入って行く。
「あ…あの…
この紅欲しいんですけど……」
主人は優しく笑い、瑠衣が差し出した紅を包んでくれる。
瑠衣は代金を払いながら、ふと考えて……
「その…
鏡…ありますか?」
「今付けるのかい、其処にあるよ」
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